翻訳・通訳のグローヴァ
II「指示と報告」編
Lesson5

Lesson6
2002
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Lesson 6 ミスコミ3種の怪物 
1、ミスコミの原因

  ミスコミュニケーション(以下:ミスコミ)は至るところで起こっている。そしてそのうちの多くは余計な手間を増やし、作業を遅らせ、時には致命的なトラブルを引き起こしてしまう。

  伝達のプロセスを分析すると次のようになり、ミスコミの原因も大きく3種類ある。

事 実 認 識 表 現 理 解

1. 事実を見たり聞いたりして、それを認識するプロセスだ。同じことを経験した場合でも、人それぞれで認識が違う場合がある。
このプロセスが原因で起こるのが、第?種ミスコミ。すなわち事実認識そのものが間違っている場合。最初から間違った情報を伝える(伝えられる)ケースだ。これを用語で「ガセ」と呼ぶ。
2. 次に認識をことばにして表現するプロセス。第?種ミスコミは、表現がまずかったり、言葉足らずだったりする場合。これを用語で「表現ミス」と呼ぶ。
3. 3番目は、表現されたことばが理解されるプロセス。第?種ミスコミは、このプロセスにおいて起こるもので、用語で「共有ミス」と呼ぶ。

2、実損を生む具体例

1. 第1種「ガセ」の例

当時、大阪の翻訳課は同じビルの5Fと8Fに別れていた。5Fにコーディネーター、8Fには翻訳者が集まっていた。ある日、電話の故障があり、8Fに内線が通じなくなり、5Fのコーディネーターと8Fの翻訳者たちは、何か連絡がある度に、直接会いにいかないといけなくなった。
その状態は何日間も続き、数人から苦痛の声が上がり始めた。
「今、在席しているかどうか確認するためだけでも、わざわざ8Fまで行かなくてはいけないんですよ。急ぎの時なんてエレベーターを待つと時間がかかるから、8Fまで階段で走っていくこともしょっちゅうです。ひどく効率が悪いです。困りました」
社長もその声を聞いたが「一時的なことなので我慢しないと仕方ないな。すぐ直るだろう」くらいに思ってさほど気に止めなかった。
それから、2ヶ月後、社内で翻訳業務の効率が問題になった時、その原因の一つに連絡のとりづらさがでてきた。社長はびっくりした。なんと今だに8Fへは内線が通じない状態だったのだ。あの時以来ずっと通じなくて、もはやそれが普通の状態となってしまっている。あきれたことにそれが前提となっていて、「だから業務が非効率になってもしかたない」という訳の分からないあきらめの言葉をいう社員も現れるという始末。
「そんな馬鹿な! なんでそんなもんいつまでも放って置くんだ? 直せば済むじゃないか?」
こうなると、さすがに社長もしびれを切らし、自らで状況を追求せざるを得なかった。「8Fの電話は一体どうなっているんだ?」
Aさんが答えた。「8Fには受話器がありません。社長が持って行ったまま、帰ってきていないそうです」
社長はあまりに意外な答えにびつくりした。
「え?俺が持って行った?それは誰から聞いたんだ?」
「Bさんがおっしゃっていました」
Bさんに聞くとCさんから聞いたという。Cさんに聞くと、本社のDさんから聞いたという。Dさんに聞くと設備業者のEさんから聞いたという。
社長は設備業者のEさんに尋ねると、「いえ。そんなことは有り得ません」との答。
では受話器はどこにあるのかと聞くと「元の場所にあるはずですが」
社長は8Fの現場まで走って見に行った。確かに机の上にはなかった。おかしいなと思って辺りを見回すと、なんと机の下に置いてあった。

2. 第2種「表現ミス」の例

3. 第?種「共有ミス」の例
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