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第 2 章 職務権限規定

何を正しいと思うかは人によって違う。そして意見を強く主張する人はみんな「自分だけが正しい」と思っている。だから、みんなが自分の考えに固執し譲らなければ、社内は衝突だらけで収拾がつかなくなる。各自が思い通りのことをばらばらにやっていたら業務もめちゃくちゃになる。
  かといって、あまりに中央集権で官僚主義的な組織にすると息苦しい。活力を失う。硬直化して腐って死に至る。

したがって、組織の秩序を重視する余り、むやみに個性をつぶすようなことはしてはならない。かといって、みんなが思い思いに好き勝手やっていいわけではない。そこで、どこまでが許されてどこまでが許されないかについて、全員が最低限の共通基盤となる認識を持つ必要がある。

社会一般における組織の原理原則を、最低限の秩序として本規定で定め、そのなかで最大限に個を活かすことを目的にして「第 3 章 アンチ官僚主義規定」を定める。

ほとんどの人は、単純に社会常識として「上司の決定や命令に従わねばならない」と思っているが、その意味をより明確にするために、その正当性の根拠について説明する。

意思決定者=リスクテイカー

結果に対する責任と手段を決定する権限は表裏一体である。意思決定によって生じる結果に責任を負う者が意志決定の権限を持つということだ。例えば、どんなカーテンを選ぶかはその家の人が決めることで、隣の家の人が決める問題ではない。隣の人がインテリアコーディネーターでセンスが良いとしても、隣の家のカーテンを決める権利はない。カーテンを買うときの代金としてかかる金銭リスク、買った後、良かったか悪かったかという結果に責任を持つのはカーテンを買う人だからだ。

資本主義社会における結果責任とは、最終的には「資本金のリスク」である。すなわち株主がお金を出し、企業が倒産したらお金がパーになるリスクを負うというのが結果責任だ。つまり究極的な意思決定者は株主(株主が複数のときは議決株数。簡単に言えば負っているリスクに応じて決定権がある)ということになる。非公開企業の場合は、最大株主=代表取締役である創業オーナー型がほとんどで、我々も現在はそのかたち(ちなみに CEO が負っている金銭リスクは資本・借入金の保証をあわせて約 8 億円)。つまり、我々の場合、 CEO が最大の結果責任者=意思決定者ということになる。ここまでがリアルワールドとしての結果責任と意思決定権である。

これに対して、会社内で定められた権限と責任はバーチャルなものだ。すなわち経営についての意思決定権を持つトップが、自分が信頼できると思う社員に自己の権限を委譲するとともに、それに応じた責任を設定しているのが会社内での「権限」と「責任」である。言い換えると権限を与えられた人には、リアルワールドでの経済的責任はなく、トップが自らの意志で権限を委譲することに決めたバーチャルな権限と責任だけがあるということになる。つまり、世の中での会社内での権限と責任のあり方はトップの考え方次第ということになり、そのあり方にはトップの個性がでる。すべてを自分で決める徹底的にワンマンな社長もいれば、かなりの権限委譲を行い部下に任せる社長もいる。いずれにせよ、企業における意思決定権・指揮命令権の正当性は以上のような社会の原理原則から発する。

社員が会社の定めた意思決定や指揮命令の権限に逆らうことは、経営者が会社の借入金の個人保証や経営上の損失の弁済を社員に押し付けるのと同じくらい暴挙なのである。


第 1 条 【意思決定の権限】

業務上の意思決定の権限は、会社が決裁基準表等に定めた者が持つ。

意思決定ができるのは、会社が意思決定の権限を定めた者のみ。

第 2 条 【決定の遵守】

全社員は、会社が定めた意思決定者の決定には服さねばならない。

意思決定者の決定には従わなければならない。

第 3 条 【事前ヒアリング】

意思決定者が何かを決める際には、より良い決定をするために事前に部下や実行者にヒアリングすることが望ましい。しかし、どこまで誰にどのくらいヒアリングするかについては事前に聞きたい人全員に意見を聞いてまわっていたらキリが無いし、時間が勝負のときもあるから、どんな時もどんな人にも事前にヒアリングせねばならないという義務はない。事前に意見をヒアリングする義務があるものは、別途「決裁基準表」で稟議者として定めているもののみである。

決定者は既定の稟議者に、事前ヒアリングを行わなくてはならない。

第 4 条 【業務命令の遵守】

職制上の指揮命令系統に則った業務上の指示命令は、遵守せねばならない。

業務上の指示命令は、遵守せねばならない。

第 5 条 【社内ルールの遵守】

規定・業務マニュアル等の社内ルールは遵守せねばならない。

規定・業務マニュアル等の社内ルールは遵守せねばならない。

第 6 条 【事前ヒアリング】

意思決定者が何かを決める際には、より良い決定をするために事前に部下や実行者にヒアリングすることが望ましい。しかし、どこまで誰にどのくらいヒアリングするかについては事前に聞きたい人全員に意見を聞いてまわっていたらキリが無いし、時間が勝負のときもあるから、どんな時もどんな人にも事前にヒアリングせねばならないという義務はない。事前に意見をヒアリングする義務があるものは、別途「決裁基準表」で稟議者として定めているもののみである。

決定者は既定の稟議者に、事前ヒアリングを行わなくてはならない。



これらは、組織が組織として成り立つための最低限のルールである。実質的にどの意見が正しいかということ以前の問題である。どの意見が正しいかという問題と組織としてのルールの問題とは切り離して考えなくてはならない。野球で言えば、ピッチングに文句があるからといってベンチから飛び出て勝手にピッチャーをするわけにはいかない。先に選手交替がされなければならない。仮にあなたの方が本当に良いピッチャーだとしてもだ。

これらの最低限の秩序を乱す者は、能力の如何を問わず、許すわけにはいけない。

以上の規定は最低限の秩序を守るためのものである。逆に言えば、これらの規定があるからといって会社としてどうやってより良い意思決定を行うかという問題は解決されるわけではないともいえる。ルールはルールとして前提にしたうえで、社内の決裁権限をどのように設定するのが良いか、より良い正しい意思決定をするためにはどうすれば良いかについて考える必要がある。



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