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第 3 章 アンチ官僚主義規定

職務権限規定は組織が組織として成立するための最低条件を定めている。しかし一方で管理統制を放し飼いにしておくと官僚主義という弊害も生む。そこで組織として最低限の秩序を維持しながらも、官僚主義の弊害を防止し、最大限に個を生かす組織をつくるために本規定を設ける。


第 6 条 【意思決定の権限】

  決定に対して、稟議や決裁の時点もしくは事後で、納得できないと異義を唱えられたり説明を求められたら、意思決定権限者はその意見に対して真剣に聞く耳をもち、その質問に対しては忍耐強く説明を行う義務が生じる。ただし、その決定の背景が戦略的に企業機密に属する場合に限っては、意思決定権限者は説明の義務を負わないし、説明をしてはならない。

反対意見は真剣に聞き、質問には忍耐強く説明する義務がある。

  意思決定権限者からみれば、いちいち反対意見に耳をかして説明するのは、面倒かも知れない。反射的にカッとくることもあるだろう。特に、相手の理解力が足らないと思われる場合や簡単には説明できない場合は、ほとほと嫌気がさすことだろう。「黙って従え!説明するのも面倒だ」ときっぱりと切り捨ててしまいたいかもしれない。それでも、相手が真剣に仕事のことを考えて心底説明を求めているのならば、意思決定権限者は忍耐をもって十分な対話をしなくてはならない。意思決定権限者が現場の意見に対して聞く耳を持たず、質問に対しても説明もせず、「とにかく黙って言う通りにしろ!」なんてやっると、裸の王様状態になってしまう。馬を鹿というようになってしまう。
  それだけではない。時には上長よりも部下の考えの方が正しいときもあることを私は知っている。権限をもった専門部署よりも現場からの意見が正しいときがあることも知っている。もしかしたら決定者の側が何か見落とした点があるかも知れない。部下の言い分を聞いて決定が変わる可能性もある。私が意思決定権限者に期待しているのは、意見を出してくる部下の是非を裁くことではなく、より良い決定を行うことである。(→ 角を矯めて牛を殺さないで
  決定が正しいにしても、相手に対する敬意と思いやりという意味でも説明を尽くす必要がある。(→ Respect & Caring

第 7 条  【反対意見を言う側の義務】

反対意見を言う部下の側は、むやみに上司に対して批判的な言葉使いや態度をしてはならない。

反対意見をいう側は、むやみに批判的な言葉使いや態度をしない。

面白いのは(笑えないけど)、当社では上席者に厳しく部下に優しくという方向がいきすぎて、上席者が下手にでて丁寧に説明をしようとしているのに、部下の方が横暴な言葉でどやしつけて高圧的に対話を拒絶するという、世間とは正反対の逆イビリが見られる。そういう時もこれまでは、上司の方に、耐え忍んで根気よく部下が納得してもらうまで話しかけてくれと頼んでいた。でもあまりに上司たちが痛々しくてさすがに申し訳なくなってきて自分の行き過ぎを反省した。今後は、例え部下であっても上司に対してあまりに横暴な態度や人格を軽視する言動をとったときは許さないこととする。(→ Respect & Caring

第 8 条  【決定保留申請】

  正規の方法で意思決定がなされた事後であっても、その決定に問題があることに気づいた場合は、会社に決定保留申請を提出することが出来る。決定保留申請が提出された場合は、提出時より会社からの返答がされるまでの期間は決定遵守義務が免除される。また、申請者には会社への貢献を称え、ブルーカードを支給するとともに、その所属部署に対しては相当額の CPP を支給する。
  なお当然のことながら、反対意見があっても決定保留申請を提出するまでは決定権限者の決定に対しては遵守する義務がある。

決定保留申請を出せば、決定後でも遵守義務は免除される。

第 9 条 【ルール変更提案】

  規定・マニュアル等のルールも必ずしも間違いがないとは言えない。不備、矛盾点、不明点、現状にあわなくなった項目があれば変更提案を歓迎する。変更提案を提出すれば、提出時より会社からの返答がされるまでの期間は遵守義務が免除される。
  また、提案者には会社への貢献を称え、ブルーカードを支給するとともに、その所属部署に対しては相当額の CPP を支給する。
  なお当然のことながら、ルールに問題があることに気づいていてもルール変更申請を提出するまでは決定権限者の決定に対しては遵守する義務がある。

ルール変更提案を出せば、遵守義務は免除される

第 10 条 【決裁スピード】

稟議者および決裁者は、申請者の業務に支障をきたすほどスピードが遅くならないよう気をつけねばならない。決裁希望日時を超えても決裁が降りず、かつ業務上で実害が発生する合理的な理由があるときは、申請者は総務室に届け出をしたうえで決裁無しで実行に移せるものとする。

緊急で止むを得ない場合は、未決裁でも実行に移していい。

第 11 条 【事務の簡素化原則】

  管理統制を行うためには書類・手続き・規則が必要だが、放置していくとむやみに増殖し、必要のない形骸化した仕事を増やすことになる。これらはギリギリ限界まで簡素化するように徹底しなくてはならない。

事務は徹底的に簡素化しなくてはならない。

第 12 条 【ステージ選択制度】

  「上長のやり方には従わなければならない。それはわかっている。でも、どう考えても上のやり方は納得できない。自分だったらもっと上手くできる」と思ったら、自分の部署を持って試してみたらいい。立候補すれば、自分の部署を持つリーダーや FA になることができる。(→ 「出る杭は引き抜く」ポリシー


立候補すれば自分の部署が持てる。FAにもなれる。


  ただし、 FA であろうが、リーダーであろうが、マネージャーであろうが、何であろうが「責任と権限の一致原則」から除外されることはない。権限を持つということは責任も持つということである。ここでいう責任とは、業績責任である(→ 業績評価規定 )。また、自部署が持っている責任を超えた意志決定はできない。自部署で完結する事項の意思決定であっても会社で定められた決裁権限を越えることは許されない。

第 13 条 【独占組織規定】

  「専門機能について独占的な権限を持っている部署の指示には従わなければならない。でもどう考えてもおかしい。本来プラスにならなければならない権限の集中が、かえってボトルネックになってしまっている」と思ったら、「ダウト!」と叫びながらダウト申請ができる。詳しくは別途「独占組織規程」で定める。(→ 独占組織規定

専門部署には、ダウト申請をして審査を要求することができる。

第 14 条 【縦の壁 禁止令】

  全社員は、「経営の方針や指示が現場に伝わらない、もしくは歪んで伝わる。逆に、現場の状況が経営に伝わらない」という縦の壁をつくってはならない。意図的に縦の壁をつくる者は許さない。それを知って見ぬ振りをする者も同罪とする。
経営陣は現場の状況を把握できるよう、出来る限り末端の社員とのコミュニケーションをとる努力をする。

全社員は、意図的に縦の壁をつくってはならない。

第 15 条 【横の壁 禁止令】

  全社員は、不要なセクショナリズムに陥ることのないよう、全社的な観点をもって横の協力姿勢を示さねばならない。部署間で非協力的または反発的な態度をとって、円滑かつ効率的な業務遂行を妨げてはならない。意図的に横の壁をつくる者は許さない。

全社員は、意図的に横の壁をつくってはならない。

なお、部署ごとの業務目標の達成努力は、意図的に横の壁をつくることの言い訳にはならない。また、双方の関係が悪化すると、双方とも自分が正しく相手が間違っていると主張するのが常である。そういう場合は、「憎悪および対話拒否の無条件禁止」の理念に基づき、憎悪の感情を示した者と対話拒否を行った者を罰するものとする。

「憎悪」と「対話拒否」は、無条件に禁止する。

第 16 条 【没個性は嫌だ】

  官僚主義的な没個性ポリシーは嫌だ。顧客や来客に対して悪い印象を与える等の明確な実害がない限りにおいて、髪型・服装・化粧・アクセサリーは自由とする。

実害がない限り、髪型・服装・化粧・アクセサリーは自由。

  ちなみに、「制服」の起源は人食い人種からきているらしい。人食い人種が同じような格好で顔や体を飾るのは、個人が特定できないようにするためだとか。敵を殺したときに「あ!俺の父ちゃん食ったのはあいつだ!」と復讐されないように。
そういえば、偶然なのか何なのかわからないが、所属意識を持たせるためという理由で制服を採用する組織というのは、往々にして責任逃れも上手だ。
ということで制服はつくるまいと思った。




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